OECDのEducation at a glance (2012) と日本

毎年発行されている「Education at a Glance 2012 OECD indicators」が発行されたので流し読みしました。(まとめバージョンはこちら、結論のみ)

教育のように各国で定義も手法もばらばらな分野に関して国境を超えてデータをまとめて提示するのは難しいことだと思います。そしてそのまとまったデータをグラフで可視化したりランク付けしてしまうと、どうしてもそこから伝わってくるビジュアルなメッセージに必要以上に影響されてしまいがちです。これに目を通してしまった自分達がそうしてしまう事のリスクを踏まえつつ・・・・(こんな風にまとめられちゃったりしていますが@The Economist

このレポートを見て気になったことをいくつか忘れないうちに書いておこうと思います。

印象的だったポイント

Executive Summaryでは
・Knowledge Economyの台頭
・高等教育の爆発的な普及
というトレンドが継続している、という背景に加えて、多くの国において対GDPでの教育に対する支出(国、地域、家庭全てを含めたもの)は引き続き増加している、という傾向について触れられています。

OECDが発行したレポートですがOECD以外の国のデータも含められています。

今年は今までのレポートに加えて新しくEarly Childhood Education(幼少期教育)のセクションを設けるなど、その分野への興味の高まりも感じられます。

今回改めて思ったのは、日本の「基礎教育を幅広く自国の民に徹底的に提供する度」はやはり各国の中でも高いな、ということ。これが今後21世紀に求められている高い「質」の教育を提供しているかは別の話ですがdrop outが少なかったり、機会の格差がそこまで他国に比べて大きくなかったり、・・そういう意味では仕組みの枠そのものはしっかりしていると感じました。

日本に関して気になったところ

しかし・・このレポートの中で日本人として気になる図表が3つありました。
  • P72 Percentage of 15-year-old boys and girls who plan to work in ISCO major occupational groups 1 and 2(それまでのデータでは高水準だった日本がここで平均以下に)(就労に対する意欲を測るもののようですが・・・)
  • P77, 78 Percentage of  tertiary-type A and advanced research qualifications awarded to women (2010)(驚くほど大きい男女の差、最下位の日本)毎年出ているWEFのレポートIMDのレポートからも感じますが「日本」x「女性」の分野では色々なデータに驚かされるものが多いです
  • P462 Changes in teachers’ salaries after 15 years of experience/minimum training in lower secondary education (2000, 2005, 2010)(過去5年、10年の教師の給与の成長率の低さ、最下位の日本)

これから

ちなみに・・・教育の内容を測る基準の一つに「時間」が多く使われていました。(例えば授業時間のように)しかし、Emerging Technologiesの授業ではITの利活用が学校現場に入ってくればくるほど授業の内容の評価のあり方、教師の評価のあり方、これらも一緒に変えていく事が必要だ、という話になります。従来のようにインプット時間で測定すること
に限定が出てくるという話になります。このテーマは「Measuring Effectiveness」というキーワードで大きく注目されています。

そちらの研究が進めばこのOECDに取り上げられるいくつかの指標も古いものとなっていくかもしれません。(他にも色々と使用されていた指標で「これって本当?」と思ったものはいくつかありました)

最後に・・・P219の大学以上の教育(Tertiary Education)に関わるコスト比較。アメリカ(とカナダ)の高さがどれだけ異常かが分かります。

OECDが発行しているEducation at a Glance 2012年度版
OECDが発行しているEducation at a Glance 2012年度版