MOOCセミナー@MIT ②

今回のエントリーは以下のセミナーの内容そのものについて。
MOOCs and the Emerging Digital Classroom@MIT Media Lab。

前回のエントリーで書いたように以下の3名がスピーカー。
①(Skype参加)CourseraのfounderであるDaphne Koller教授
edXのpresidentであるAnant Agarwal教授
③ Lafayette Collegeのpresidentに最近任命され、現在
 MITでvisiting scholarをしているAlison Byerly教授

私が個人的に感じていることは前回のエントリーで好き勝手に
書いていますので、今回はなるべくスピーカーの発言の共有を意識します。

============================================
① Daphne Koller教授(Courseraの視点)
・Courseraの創業期の話、2011秋
 スタンフォード大のあるコースをオンラインに提供してみたら
 どうかという話になった
 ▷当時は数千人が登録してくれたらいいな、という期待
 実際には十万人の登録が
・今Courseraのプラットフォームに提携している大学は
 多数、米国大学に限らず24の海外大学(4つでもの大陸)とも
 提携している
・今は英語・フランス語展開、すぐにスペイン語、イタリア語、
 中国語を予定
・現在提供コース数は330
・当初の理系の科目から既に哲学/薬学/グローバル課題/写真/
 音楽パフォーマンスなどの幅広い科目で展開
・2日前に受講生の数が300万人を突破
・つまり11ヶ月弱で300万の成長をしたことになる
・受講生プローフィールにはコロンビア(国)からのフルブライト奨学生や
 パキスタンのNGO創業者やインドの起業コンペティションの受賞者などを含む
・また自閉症の子どもがMOOCで学ぶことでその症状を軽減させたという事例が
 あったり(研究・検証された結果なのかはあまりはっきりと語られていなかった)
・乳がんstage4で病院で治療を受けている人の学習機会を提供しているという事例を
 紹介
・従来からあったMITのOpen Coursewareとは異なり〆切のある課題があって
 それに対して成績が付与される(私はOpen Coursewareのことは良く知りません)
・3つの特徴
  ①Personalizationを可能にするvideo based learning
   元々従来の「コマ」授業は時間の区切り方も教える内容の区切り方も
   学生の集中力の限度の観点から&認知学の観点からして「理想」からは
   かけ離れていた。個人の学習ペースやニーズに合わせたかたちで
   学びを届けることを可能にする。
  ②「Students learn by actively interacting with the material」
   という学習学の理論を意識した設計にしている。例えば四択問題や
   「空欄を埋める」系の問題だけではない課題を課す、かつそれを
   自動添削することを可能にすることで規模化につなげたり、
   学習者にimmediate feedbackを提供する。gamificationの
   エッセンスが加わるのも学習者のengagementにつながる。繰り返し正解が
   でるまでトライ&エラーを続けることがmastery-based learningに
   つながる。(若干自分が感じたのは「gamificationのエッセンスが感じられる
   設問は正しい答えが一つ系の問題に限られてしまうのでは?」という疑問)
   PCの(添削に関する)能力の限界に対してはPeer grading(相互添削)の
   仕組みを導入。研究で証明されていることもあり、しっかりとした
   grading rubrics(評価基準)を浸透させた個人であれば先生が添削するのと
   同等の有効な結果を生徒間でも提供できるという。(プリンストン大社会学の
   研究結果)
   また、デザイン系・クリエイティブな授業はどうなのか?という問いに関しては
   事例としてUPenn(Wharton)のKarl Ulrichのクラスで課された
   クリエイティブ性が求められるOpen ended assignment(つまり正しい
   答えは一つではない系の課題)についてどうPeer grading(相互添削)が
   有益だったかの研究調査が行われた。結果としてこの体験がより学びを
   深めることにつながたt。なぜか、それは自分達がそれぞれ課題に取り組み
   思考投入していた状態だったので、他のクラスメートがどのようなアイディアを
   同じ課題に対して出して来たかということにオープンマインドになっていた
   から。そしてこれはクリエイティビティを学ぶ過程で重要なことであるのは
   既に良く知られていること。
  ③学ぶコミュニティづくり
   instructorから直接個人の学生に細かいフォローをするのは現実難しい
   だからこそPeer interactionsの醸成を意識している
・Credentials(認証システム)
 先日signature track coursesという仕組みを導入した。
 Courseraはずっとコースへのアクセスはオープンで無料にしたい、という
 考え方。ただし、認証が必要な場合は30−50ドルで提供する、というサービス。
 経済状況などの理由でこの費用を支払うことができないけれども
 認証が必要(就職活動や出願)な場合はFinancial Aidというオプションもある
・データの活用方法
 GoogleやFacebookが活用しているA/B Testing(さりげなく違うものを
 提供し、ユーザーの反応をチェックし、サービスの向上に使うための情報収集手法)
 と同様のことをpedagogy(教育手法)の質向上のために実施している
・現時点では受講者の3割ほどが北アメリカ、28%が欧州、4割ほどがいわゆる
 途上国地域▷引き続き人間としての基本的な権利である教育へのアクセスを
 広めていきたい

② Anant Agarwal教授(edXの視点)
・今までは得ることのできる教育は「どこ出身か」(物理的なものもあるし
 経済的なものもある)で制限されていたところがある
・edXはハーバードとMITが半分づつ出資し、合計6000万ドルの資本金で
 設立された非営利ベンチャー(Courseraが営利目的なのとは対照的です)
・目指しているものは教育へのアクセスの向上、とon campusでの
 教育の質の向上(ここがCourseraとは違うニュアンスを感じます)
・コースに限らずプラットフォームのcodeも無料でオープンにしている
 各大学がそのcodeを自分達で取り入れて同じようなことをしてもらえれば
 と思っているから(ここらへんMITっぽいですね)
・現時点でパートナー大学は12
・edXの付加価値は①big dataを使って学び(learning)に効果的な教育手法
(pedagogy)の研究を進めること、②高品質なコンテンツ作成のための
 サポート
・on campusのコースと同等の「high quality course」にフォーカスすることを
 意識している
・研究が既にどんどんと進んでいる。いつ、どうやって履修者が学んでいるか
 分析が進んでいる。
 例えば、circuits and electronicsというコース
  15万人強が登録をした(これはちなみにMITの150年の歴史の卒業生の総数以上)
  2万6千人が最初の課題に取り組んだ
  1万人強が中間試験までついてこれた
  9300人が中間試験を合格
  8240人が期末試験を受験
  7157人が同コースを修了した
・コース履修者エピソード
  先週MITの大学の受験結果が発表されていた
  MITxのコースを受講していて好成績だったインド人、モンゴル人、彼らは
  合格結果通知を受け取った
  同様にBerkeleysxのコースを受講していた中国人もMITから合格結果を
  受け取った
  彼らは大学入学前から大学レベルの授業をオンラインで履修し、完了させたことで
 「このようなレベルの内容をマスターすることができる」ことを証明していたから
・もう一つ別の研究結果
  San Jose State Universityではこのcircuits and electronicsコースと
  同様の授業をキャンパスで実施していたが、毎年毎年ドロップアウトする
  学生の多さに悩んでいた。そこで、オンラインで提供されていたMITxの
  コースを使うことにして、学生には予習段階として上記オンラインビデオを
  その都度見てもらい、実際のクラスではディスカッションや応用にフォーカス
  した授業を教授が指導した。結果として再履修しなくてはいけない学生の
  比率が41%から9%に下落した。これは「提供する学びの質」の改善にあたる。
・Learning(学び)とretention(学んだことをキープすること)は
 depth of mental processing(思考投入の深さ)に関連する
 (Craik&Lockhart,、1972)
・他にもキーワードとしてvideo snippets, computer graded exercises,
   green checkmark for engagement, discussion forum, students help each
   other, virtual game like laboratory, AI (artificial intelligence) for essay
   grading. Mix of self-, peer- and AI gradingなど。(多くはCourseraと
 似ていると思います)

③Alison Byerly教授(一教授&校長としての視点)
・象徴的なのは今まで世間から隠れていた&一部の人向けと囲い込まれていた
 「エリート高等教育」の中身がオープンになること
・今後は「student」や「course」などの定義が変わって行く可能性がある
・Formal and informal learning experienceの境界線が曖昧になる
・色々な質問がでてくる。例えば、MOOCで登壇する教授は追加で何か
 評価されることになっていくのだろうか?
・MOOCと従来からあったカリキュラムとの関係性を再考しないといけない
・大学のガバナンスとどう折り合いをつけるのか
・今まで学部にはそれぞれ「必須科目」という枠組みがあったように
 ある程度のlearning goals, certain requirements, learning trajectoriesが
 設計されていた、今後それはどうなるのか
・Intellectual communityとCourse experienceの両方は必ずしも同じものでは
 なくなってくるということを意識しなくてはいけない
・大学は自分達のそれぞれのミッションを考える必要がある。Professionalなのか
 VocationalなのかLiberal Artsなのか、などなど。
 そのミッションに照らし合わせて自分達はこのような取り組みに投資していくべきか
 というものを考える必要があるから(なんせ、投資金額は少なくない、
 確かに寄付金などが十分にあるtier1大学は投資余力がある、tier2以下は
  どうなるのか)それぞれの大学が自分達の未来を真剣に考える必要がある

【質疑応答から(一部)】
Q:今発展途上国の政治家だったとしたら何をしたらいいか?
A:インフラ(ブロードバンドなど)への投資、安価なデバイスの国民への普及
 郵便局の存在価値がどんどんと減って行っている状況なので
 古い郵便局をオンラインコミュニティセンターなどへ転換するという案もある、
 また、政権として「するべきではないこと」はbricks and motors schoolを
 どんどん増設することだと思われる。たとえば今後1500もの大学を建てることを
 検討している政府がある。ただ既に既存の大学も教員不足に苦しんでいる。
 そこで建物だけそんなに作ってどうするのだろうか。発展途上国は
 地上電話の普及をスキップして携帯電話文化にすぐ行ったように、
 大学についての考え方も柔軟にするべきだ。「スキップ」することがおそらく
 唯一の、短期間で実現可能な教育機会供給の解決法だと考える。

Q:コースの多くは一定のtrajectories(学ぶべき順序)がある。学習者の
  好きに学びのルートを選べるようにすることはしないのか?
A:Adaptive learningのことは検討したこともある。たとえばConcept mapを
  提示して、そこから好きに開始してくださいと。研究調査では学習者は
  始まりと終わりの地点、またその途中のルートのガイドがあることを希望する
  声のほうが多かった。ガイドがあってもたまに「知的寄り道」は発生する。
  結果としてそのような寄り道を可能にしつつもある程度のtrajectoriesは
  今の時点では必要そうだ、と判断した。もしかしたら中長期でこれは
  変わって行くかもしれない。

Q:コースの修了率が初期の登録者の5%という数値をどのように高めるつもりか?
A:このようなコースはあくまでもActive learnerを対象にしている。本気で
  学ぶ気があって、ビデオも見て、課題も取り組んでくれる学習者。
  そうすると最初の課題に取り組んだ学生が母数になると理解する。すると
  修了率は3割ほど。これは低い数字とは考えていない。
============================================
一人Q&Aで「アメリカ発だけなんですかMOOCは、文化的配慮とかについて
どう思いますか」的なコメントをしている人がいました。
最近バタバタとアメリカ以外の国でもMOOC誕生の動きが出て来ていますね。

・イギリス Futurelearn (2013年2月19日記事)
・ドイツ iversity、欧州のCourseraなるか(2013年3月11日記事)
・オーストラリア Open2Study(2013年3月21日記事) 

引き続き(バブル感を若干冷ややかに見つつも←ここらへんが金融出身者だな、
自分・・と思います・・)この世界の動きは注視していこうと思います。