スーザン・ラインという素敵な女性リーダー

いつもはブログへのインプットになりそうな場に言ったときはメモを取るのですが、今夜はノートを片手に、的な雰囲気ではなかったので、寝る前に忘れないように書き留めておきます。受けとった刺激を忘れないように・・・。

今夜は、数ヶ月に一回開催されている「女性サロン」@ジャクリーン(弊社CEO)の自宅でした。参加者は彼女の友人、Acumenのネットワーク内の仲間、社員など。全員女性。私は今回が二回目。前回参加したときのスピーカーはBrain Pickingsという個人ブログで有名なMaria Popovaさんでした(FBページホームページ)。

このサロンのスタイルは、最初の45分くらいが自由な立食パーティースタイル。とにかく50人強のエネルギィッシュな女性が集まるので賑やかです。その後の1時間半くらいがスピーカーの方のお話、そして質疑応答。私達聞き手は床に座ったり、ソファーによりかかったりして、広いリビングスペースでゆったりと皆で対話をするイメージの夜です。

そんなサロンの今夜スピーカーはスーザン・ライン氏でした。英語表記はSusan Lyneさん。64歳の現役女性リーダー。

そんな彼女、日本語の記事はあまり見つからず、あまり知られていないのかなと思い、日本語で敢えて今回書き記しておこうと思った次第です。

「鮮やかな」人生、彼女の価値観

まず、彼女の働き人としての40年間の経歴を記載しておきます。私は彼女のことをGilt Groupe(自分、Gilt愛用しています♡ Giltって何?という人は日本語の記事をご参考まで)の代表という理解で今夜のサロンに足を運んだのですが、それが間違っていたばかりではなく、それは様々な形で進化を遂げている彼女のキャリア人生の一部の側面であったことを知る事となりました。

色々なキャリアシフトを経験している自分の同世代や少し上の世代は知り合いに多くいますが、60代半ばの現役リーダーでここまで、様々な環境変化に自ら飛び込み、それをくぐり抜け、新しいことを学び続け、進化している人を私はあまり知りません。
最初の仕事は新しい雑誌立ち上げのチーフ編集者のアシスタント
K-111 Communications(そのとき雑誌担当)
News Corporation(メディア)で働いた後、
1996年から二年はWalt Disney(映画)
1998年から六年はABC Entertainment(テレビ、ドラマ)
2004年から四年はMartha Stewart Living Omnimedia(総合メディア)President CEO
2008年から五年はGilt Groupe(Eコマース)CEO、その後Chair
2013年からは現職AOL(ウェブメディア)
転職が日常茶飯事と言われているここアメリカでも、おそらく彼女のような道のりを歩人間は珍しいのでしょう。こういった記事が出ているくらいです。▷The Many Lives of Susan Lyne(Fortune誌、2011年10月)

彼女の歩いて来た道のり、選択の軌跡から伝わってくるのは、彼女が毎回「学びの機会」のある方に向き、「自分の心がワクワクする」シグナルに素直に行動してきたというところ。

また、大学中退という出発点に加え、大企業の役員の立場を解雇された時の経験や、4人の娘(実の娘は二人)を育てた母親という側面、旦那様のガン闘病時に得た学びなども全て彼女という人間のストーリーを一層興味深いものにさせています。▷AOL's Susan Lyne On Why Vulnerability Isn't A Weakness(Forbes誌、2013年9月)

そんな彼女から伝わって来たメッセージ

ノートにメモ出来なかったので、今印象に残っているメッセージだけ記載します。


①自分の成し遂げたことをもっと評価してあげよう
  • 多くの人は、特に女性は、自分が失敗したこと、こうすればよかった、あぁすればよかった、といった事に意識を向け過ぎ
  • でも、もっと自分を褒めるべき
  • 一日の終わりに自分がその日に成し遂げた10の事を書き記してみよう
  • その習慣が自分に与える影響はとても大きい
  • 彼女も元々(特に若いとき)自意識の強い人間であったため、必要以上に後悔/失敗部分に意識を向けていた時期があったそう
  • ちなみに、一般論として「評価されるべき女性社員が昇給要求を申し出るケースは比較的少ない」のに対し、「既に正当に評価されている男性社員が更なる昇給要求をしてくるケースはとても多い」のだとか

②「成功」の中にいるときはそれが見えない
  • 彼女はしばらくの間「職場で自分が一番の若手。早くもう少し年を重ねた状態で会議に参加したい」と思っていたのだそう。しかし、気付いたらいつのまにか「職場で自分が一番上。いつの間にか会議に参加している仲間は皆年下」となっていたと
  • これは「成功」というものの捉え方と似ていて、「成功したい」と思って日々頑張っている時は自分が成功しているとは思えない、しかし、後で振り返った時に成功と呼べるようなプロジェクトや瞬間はたくさん見えてくる
  • 「あぁ、私は今成功している!」と思うような人がほとんどいないのと同じで、その中にいるときはそれが見えない。でも、①に書いたように、自分をもっとその過程で褒めて挙げることが大切

③仕事と家庭、両方手にいれられるならばそれをお勧め
  • この二つの「バランス」というものは迷信です、と言い放った彼女
  • ある日は「仕事」が良い状態であったり、ある日は「家庭」が順調だったりするもの
  • 仕事も家庭もそれぞれ、独特の喜びや幸せを自分にもたらしてくれる
  • 世の中にはどちらか一つにフォーカスした人生の選択をした人もいるけれど(部屋の中を見渡しながら)まだこれから考えようとしている人には、できれば両方を手に入れようと目指すことをお勧めする、と

④働き続けることの意義、子ども達との接し方
  • 働き続けることで得られる様々なこと。その一つは多様な価値観/背景からくる人達との関わりが増えること。自分の心地いい仲間達、友人達、似たもの同士で自分の時間を埋め尽くすことは簡単だけれども、それでは自分が得られる学びの機会は限られる
  • 働くということは、そういう気楽な仲間ではない人間が自分の人生に大きな影響を与える状況に自分を置くということ。それは多大な学習機会となる
  • 実娘二人を育てた彼女。働き続ける母を持った影響はどうだったのか、という質問に対して。「おそらくどこかのタイミングで娘達は働き続ける母に対して嫌だという気持ちを抱いたことはあるかもしれません、でも思春期以降それは変わったと思います」と。義理の娘さんを合わせた4人(20代〜30代半ば)は皆それぞれのキャリア(弁護士、看護士、精神科のカウンセラー、障害を持った子ども達の学校教師兼起業家)をとても大切にしている(うち二人は子持ち)。こういう母親を持った影響は少なからずあるのだろうな、と感じる
  • 昔は帰宅後の家ではなるべく仕事の話をしなかったり、むしろ、家に帰って来ようとすることでにじみ出てくる疲労などが子ども達に伝わってしまっていたと振り返る彼女。ある時期から、もっと働くことで自分が感じている楽しい時ややりがいなどを子ども達には共有しなくては、と思い、意識的に家庭内に共有するイメージを変えていったそう

⑤次に行くべきと自分が感じた瞬間が出発点
  • 「これは違うな」と思って転職に動き出すまでの「妥当」時間も過去20年の間で変わって来たと思う、という彼女。90年代では「二年」という期間はとりあえず残るという選択が「普通」だと感じていた彼女も、今はその感覚が変わってきたという
  • むしろ、同じ場所に7−8年居続けた人の履歴書を見たときに考えるのは①この人はこの組織の中でどう進化してきたのだろう、②組織そのものがダイナミックに変化している組織なのかもしれない、この人物はその変化にどう貢献してきたのだろう、③またはこの人は何故同じ組織にこんなにも長くいたのだろう・・といったように、その人物の変化の度合い、その内容を見るようです
  • かといって、何年滞在したから転職がOK/NGといったものは存在せず、感じ方とそのタイミングは人それぞれと
  • 自分が成長していないかも、成長機会を生み出すための変化を起こすための働きかけができていないかも・・・そういうことをふと感じるようになったらその瞬間が出発点だと(彼女はそのようにして、自分の心と出会いを元に何度も何度も新しい出発点に立って来た人間なのだと個人的に感じた)

話している途中に自ら自分が64歳ということを共有しながら、でも私は常に自分が29だと思っているのよ、と笑っていました。ゆっくり、言葉を選びながら静かに話す彼女。

話してくれたストーリーや質疑応答の中で出て来たメッセージはもちろん、その人となりやその場での在り方など、様々な角度から刺激いっぱいな素敵な女性リーダーでした。

64歳といったら、自分にとってまだ30数年も先の話です。そのときは一体どんな時代になっているのでしょう。彼女がGiltに就職した時はまだTwitterも開始直後で、Android携帯電話も存在せず、Facebookも大学外の一般人向けに公開されて一年目だったと言います。

彼女が今見据えている「オンラインメディアの未来」。まだまだヨチヨチ歩きのソーシャルメディアをガラリと変える何かが半年後、一年後に登場するかもしれない、と彼女は言っていました。私達は変化を恐れ避けるように生活するか、変化していく環境にどんどん適応するかの二択しかない、だから私はこれからも変化を楽しみ世の中に対して希望を持ちながら前を向いていく、そう語っていた彼女が印象的でした。