2016年11月9日 ニューヨークにて

2016年11月8日の夜、私は3人の日本人の女友達と、自分達でつくったパエリアを食べながらマンハッタンにある家のリビングで、テレビから流れる選挙結果速報を見つめていた。皆マンハッタンで仕事をしている子達。投票権があったのはそのうちの一人だけ。

一人は為替取引を、もう一人は株の先物取り引きをしている子で、トランプ・クリントン両候補者にとって有利な情報が交錯する度に彼女達のスマホからは様々なアラートが絶え間なく鳴っていた。私ともう一人の子はそれぞれのmac book上でgoogle, politico, five thirty eightを開き、スマホではtwitterフィードを表示。皆で調理をしていた7時半前後にはワイワイと流していたSpotifyのElection Mixプレイリストの音楽も10時近くになったころには(テレビ・ネットから流れる情報に神経を集中しなくてはいけなくなったので)止めなくてはいけないくらい、部屋の緊張感は高まって来た。本当はもっと気楽にワイワイとした夜になるはずだったのに。

信じられない。え?・・・。

23時を過ぎたころにトランプ大統領誕生がほぼ確定になった時の私達の状態は8時過ぎにとったカラフルなパエリアとのグループ写真の笑顔とは全然違うものとなり、「これ、一人で見ていなくて良かった」とだけお互いに言い合いながら、彼女達は帰っていった。

そのあと、11月9日はベルリンの壁が壊された日でもあったと知った。

911(アメリカ同時多発テロ)や311(東北大震災)とはもちろんたくさんの違いがあり、死者こそほとんど出ていない今回の出来事。そうはいっても、少なくとも自分の周り、マンハッタンの街の雰囲気、自分の友人達のソーシャルメディア上のつぶやきを見ていると、多大なる消失感や混乱が皆を襲った出来事だったという点で、今回の件は911や311の時の出来事と重なるものがある。イギリスに住んでいたらBrexit発表の後、こういう感じだったのだろうか。と思わざるを得ない。

そのくらいの大きな衝撃を多くの人に与えたのが、今回の選挙だった。そう思う。


以下はトランプ大統領誕生が確実になった翌朝水曜の9日の朝11頃、オフィス内で自分が自分のFacebook上で投稿した内容。サンフランシスコにいる、友人がまとめていた文章を多くの人に共有したい、という気持ちから。

彼の文章をシェアしたときには1200前後あった「いいね」はその後時間が経つにつれてどんどん伸びている。彼の投稿内の「そのために、だれでもできることが、ふたつあります」の箇所以降だけでもぜひ見てほしい。


日本語が読める一人でも多くの人にぜひ読んでほしいWell said Shu Uesugi. 夜中の3時にこんな素敵な文章を書いてくれてありがとう

数時間睡眠後に今朝起きて、もちろん私の周りのほとんどの人が大きなショックと失望に包まれている中、国境を越えて飛び交っている個別のメッセージ、FBの投稿、社内で送られてきた社長からのメールなどをみながら、不思議と心が落ち着きはじめています。もちろん、様々なことが頭をよぎり、苦い気持ちではありますが、今回のことを自分なりに消化し、次にとるべき行動への示唆に切り替えて、へこたれそうな気持ちを抱えつつ、希望と勇気と責任感を互いに共有し合っている素敵な仲間に恵まれていることを体感させられた朝となっています。

また、結局そういう「自分の友達」はこの大きな世界においてとっても小さい泡のような存在だということを今回再び(イギリスのBrexit、コロンビアの和平合意に対する国民投票結果に続き)痛感することになったけれど、それも今回のショックがくれた、「そんな気がしていたけれどやっぱりそうだった」という学びでした。

これからもうすぐはじまる、ヒラリーのスピーチを聞き、そしたらまたちゃんと仕事に戻ろうと思います

彼も、私も、バイリンガルとして両方の言語で意見を発信し、働くことが可能な身で、かつ、社会人になってから培ってきたsocial capitalも一般的に見たら相当ある身。お互い、いろいろ「弱い立場」を経験する機会も人生においてあった/あるけれど、客観的に見たら絶対「強い立場」の人。それぞれアメリカの両岸にある大都市で生活しているけれど、家族も日本にいるし、いざという時は国を移動するという選択肢もある。そういう点では私が書いたように、彼も私も結局は「小さい泡のような存在」なのかもしれない。

それでも、私は「小さな泡」の一つのピースとして、自分ができることをこれからもしていきたいと思う。

最初に同僚と会議室で見た時涙が何故か自然に流れて来たヒラリーのスピーチ。彼女の人生に想いを馳せながら、この歴史的な日、11月9日の夜、寝る前にもう一度一人で見た。自分は今まで「女性」ということを意識して彼女を見たことはほとんど無かったのだけれど、世界中の女性に対する彼女のメッセージはやはり心に刺さるものがある、また涙が出た。自分はフェミニストではないと思っていたし、特にヒラリーを強くサポートしていた訳でもない。でも一人の人間として、一人の女性として、強く感じるものがあった。



And to all of the little girls who are watching this, never doubt that you are valuable and powerful and deserving of every chance and opportunity in the world to pursue and achieve your own dreams. - Hillary Clinton
I have spent my entire life fighting for what I believe in. I've had successes and setbacks and sometimes painful ones. Many of you are at the beginning of your professional, public, and political careers — you will have successes and setbacks too. This loss hurts, but please never stop believing that fighting for what's right is worth it. It is, it is worth it. - Hillary Clinton 

彼女にはこれから自分がどうありたいか、どうあるべきかにしっかり向き合うことを改めて意識させてくれる機会をくれてありがとう、といいたい。

ブログもしっかり再開させよう。