元小児科医、元Accentureパートナーが経営するワイナリー

さて、前回のエントリーで書いた、ハンガリー在住Maiさんがアレンジしてくれた「五感覚を意図的に知覚しEmotional Intelligenceと意思決定プロセスを意識する機会」ーー 私と今回の旅の相棒であるデザイナーのさきちゃんが参加したのはToscany(トスカーナ)の部分のみ。

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ローマFCO空港からミニバスに揺られ2時間弱のところで到着したのは、「トスカーナ地方でも、最近ワイン生産地として注目され始めた(つまり伝統的にワイン生産地として有名な場所とは異なる)エリア」らしい。

位置的には、こんな場所。(地図)



前日にローマ入りした時点では二人ともイタリアのどの部分に行く予定で、どういったストーリーがある場所に行くのか、といった事前予習ゼロ。Maiさんたちと合流する直前に空港で事前共有された記事を慌てて流し読み。

トスカーナの目的地はこちらの記事 "One Man’s Pursuit of Happiness - How a former CEO and entrepreneur found his footing again in the foothills of Tuscany’s Maremma region" の主人公であるMartinが経営するワイナリー兼VillaのValdonica(ウェブサイト | tripadvisorのページ)。

今回のブログのエントリーのタイトルにあるように、なかなかの人生ストーリーを持つビジネスマンのMartin。記事に詳細はあるのだけれど、三人の子供の父親、一時期まで小児科医、コンサルタント会社のパートナー、実業家としてバリバリ働いていた彼。この土地と恋におちて、ガラリと人生の転機を自ら描いていった経験を持つ人だ。その途中、自分がゲイであることもカミングアウトし、今は愛するパートナーと二匹の猫と、ワインやオリーブを育てながら、街の人と共存・協業する生き方を選んでいる。

そんな彼のこだわりが細部にちりばめられている空間・食事・体験を存分に浴びることのできるように、とMaiさんは私達の三日間の時間を丁寧にアレンジしてくださっていた。この場所で結婚式を挙げる人たちがいるのも納得といった、雰囲気がとっても素敵なVillaと街の空気。足を踏み入れた瞬間に時間の流れが一気にゆっくりになっていった。旅の相棒のさきちゃんと二人で「両親を連れてきたいね、ここ」と言い合った。

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丸かったりとんがっていたり、様々な個性を主張する木の幹と枝と葉っぱ。そこらへんに生えている草木の不思議な模様たち。ランダムに飛び舞うタンポポの綿毛。夕陽が作り出す独創的な木陰のシルエット。朝になると一斉に鳴り出す鳥のさえずり。夜のこおろぎの音、警戒心ゼロの猫の幸せそうな顔。一つ一つを発見するたびに喜びでいっぱいになっ他心がふわっと浮き上がる。

到着した初日の夕飯前に散歩で行った地元の小さな教会では、ブルンジ出身の芸術肌の、人懐っこい神父さんに優しく迎えられる。日本人と分かると、うれしそうに「日本人の女性とアフリカ(国は不明)出身の男性がここで結婚式挙げたことるよ」と。

Martinの家で行われた、地元の才能あふれるピアニストによるライブコンサートではショパンの一曲目で涙がこぼれそうになった。つい先日ボストンで高校時代の恩師と一緒にピアニストの内田光子さんの演奏を聞いたときも心がぎゅっとなったけれど、一ヶ月も経たない間に同じようなことを心が感じることができるなんてなんて幸せなんだろう、そう思ってまた胸がいっぱいになった。そんな素敵なひとときを、地元に住まい(または別荘)を設ける様々な国の方々と共有する。意外と元コンサル、元金融の方が多く、そんなところでもそれぞれの人生ストーリーの不思議な交差点を見つけ出す。

日帰りで山道を超えて行ったシエナの街は魔女の宅急便のシーンを彷彿させるような素敵な城下町だった。ピノキオの筆者の出身地でもあるらしい、あの街では教会のタワーの天辺まで上って、魔女の宅急便のテーマ曲を口ずさんだ。目の前に広がる景色の美しさで胸がいっぱいになる。グローバル化が進んでいるといったって、インターネットで色々なことが身近に感じるようになったといったって、あそこで身体と心で吸い込んだ刺激はどうやったって再現できない。スマホでも一眼レフでも全てを捉えることはできない。そんなことを思った。


出発前日は地元のレストランMomoでランチ。みんなで多種多様なパスタを食べ比べ。一人で切り盛りしていたおじいさんとはほとんど言葉が通じなかったけれど、美味しいご飯と笑顔という『言語』でここの人たちとは会話ができている。私のNYの部屋にある、大好きな人からもらったパンダのぬいぐるみの名前もMomo。こんなところにMomoがいるのもなんかうれしい。

 

最後に隣町にあるというドイツ人が経営している陶器屋さんに行ってみたかったけれど、バスがこなくて、どうしよっかーってなったときに、ふらりと現れたおじさんはたまたまピアノコンサートの後に同じテーブルでご飯を食べたフランスリヨンからきていた「バイクは俺の人生におけるパッションだ」と言っていたかっこいい人。暇だからのっけってあげるよ、というおじさんと彼のお友達と黒のラブラドールのシエナちゃんと、ぼろぼろ車に身を任す相棒のさきちゃんと私。

フランス語とイタリア語メインのおじさんたちとは言葉がほとんど通じないまま、隣町にいき、旧市街&丘という素敵スポットを案内される。Martinが生き方の指針のひとつとしていっていた「Go with the flow(流れに身を任せる)」だった、まさに。



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スペイン旅行の終盤にさきちゃんと振り返る、あのイタリアでのひととき。あのフランス人のおじさんとの出会いはある意味奇跡だったな、と。

ビュッフェ式のディナーで20人近くがいたあの夜、おじさんが座っていたテーブルに加わらなかったら。次の日、Momoで私達がランチをしなかったら、おじさんがMomoの隣のお店にいなかったら、私達がバスを待っている間におじさんが外に出てこなかったら、おじさんがあの午後暇じゃなかったら・・・色々な偶然、または奇跡、または必然があったから。

さらに加えるとあのおじさんと私達が一緒にディナーをしたときの4人目がMartinのパートナーのカルマじゃなかったら、会話もそこまで前に進まなかったかもしれない。カルマという、チベット寄りのインドで生まれ育った、私とほとんど年齢も変わらない好青年の存在が言葉もほとんど通じ合わない、あのフランス人のおじさんYvesと私とさきちゃんをつなげてくれた気がする。

出会いって不思議。

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そんな場を私達に共有してくれたMartinとの対話で出てきたメッセージでこのエントリーはおしまい。彼が人生の中で大切にするようになったこと。
  • 心のが喜ぶことを原動力に:Real energy comes from your soul, not from your conscious steps driven by your intentions and decisions. Energy from our heart is more powerful and long lasting. Meaningfulness comes from our heart. We live in a world in which mind is so strong and often overshadows our heart (unfortunately). Many people are trapped with their 'structure' they build in their mind
  • やりきる力:Ability to pull through matters 
  • たくさんのことを体験していくことが糧になる:We gain lessons from various experiences. These lessons help us navigate through challenges. Therefore, experience as many things as possible when/where they are available to you
それに加えて繰り返していたのは「Naiveté(素朴さ)を尊重することの大切さ」- これは彼の中ではCourage(勇気)と対極にあるようで、彼の中では心が牽引した行動は他人から見たらNaiveteであり、意識的に選択をした際のものは他者からみたら勇気ある行動となるらしい。彼がとった選択は、他人からはたまに「勇気ある行動ね」と言われるらしいのだけれど、彼としては勇気でなく自分の心にあるNaiveteを大事にした結果の行為である、と説明しているのだと。

あとゲーテのこのフレーズも印象的だった。
Intimacy lives in imperfection. 完璧な人なんていない。でもその、人間の不完全さが人と人とを強く結びつけてくれる。そんなメッセージだった。

そんな価値観を持って、大切に一日一日を過ごしているMartinとその仲間が大切に育てている有機ワイン。日本でもこれから飲めるようになるらしいです。詳細はウェブサイトより。

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