「メタ認知力」という大切なスキル(2/3)

すでに「メタ認知力」の授業があった日から1週間経ち、
今週の授業「類推 (Analogy)」に移ってしまったのですが、
今学期を通じて取り組まなくてはいけないこのクラスの課題を
しっかりやるためにはTransfer(ある場所で学んだことを実際に
必要な時に応用できるために必要なスキル)の理解が必要で、
そのためには↑Analogyの理解も重要で、その前には前提として
Metacognition(メタ認知力)の理解が必要なので自分用にブログでの
整理は続けます。

前回はざっくりなぜ自分が「メタ認知力」というテーマに興味があるか、
なぜこのスキルが「(人生を通じてずっと)学ぶ力」を身につけるために
必要だと思うか、みたいなことを好き勝手に書いてみましたが
今日は1週間前にあったクラスの事前課題のために読んだ内容を
備忘(&興味があるマニア向けへの共有)のためにまとめます。

Reading課題は3種類が必須、オプショナルで追加参考文献が3種
紹介されていました。この時期はReadingを全部できないまま授業に
参加する人が増えてくる時期。もちろん私はオプショナルなどを
やっているゆとりもなく、ギリギリ必須3種を読み終えて授業に臨みました。
※HBSの友人が見学のために来てくれる&彼もReadingを読むといってたので
 何が何でも読み込まなくてはという良いプレッシャーもありました、笑

Tina Grotzer教授(HGSE留学生活でトップ3に入るお気に入りの教授)は
Readingに取り組む際の「ガイド」というものを事前に配布します。
そこで記載されていることを意識しながら、主体性を持って、
深く文献に向き合いなさい、クラスに行く心と頭の準備をしなさい、
ということなんだと理解しています。

以下が必須の読み物3種。
① Perkins, D., Simmons, R. & Tishman, S. (1990). Teaching cognitive and
 metacognitive strategies. Journal of Structural Learning, 10(4), 285-303.

② Swartz, R. J. & Parks, S. (1994). Infusing the teaching of critical and creative
 thinking into content instruction. Pacific Grove, CA: Critical Thinking Press and
 Software. Chapter 19, Metacognition, Chp. 19 (pp. 519-529).

③ Joseph, N. (2010). Metacognition needed: Teaching middle and high school
 students to develop strategic learning skills. Preventing School Failure 54(2),
 99-103. 

ガイドには上記をなぜ選んだかの教授からの一言コメントがついています。
「These readings are not all the most recent works on metacognition but I
 assigned them because they offer a balanced view of some of the issues
 involved and concrete ways to think about engaging students in metacognition
 in the classroom. The Swartz and Parks chapter is written for elementary
 grades but can be applied to learning at all levels. The Joseph article discusses
 the importance of metacognition in the middle school and high school
 classroom and offers examples of how to integrate metacognitive techniques
 into everyday classroom instruction.」(Tina Grotzer, Course material, 2013)


ガイドには問いが4つあり、それそれが課題の読み物の内容の具体的な中身に
関わるものだったり、読み物同士のつながりを考えさせられるものだったり、
読んだ内容を踏まえた上での個人の体験の振り返りを促すものだったりします。

そんな感じで読んだ①〜③からのメモは以下の通り。
①は基本的に全ての書き物に対して結論を得ることを急ぐ傾向のある自分からすると
「つまりどう教えればいいの?」という感想もあったりする内容だったけれども
 どういうことがこのテーマで議論されているのかという点では参考になるものでした

・どんなstrategiesにもwhenとwhatという切り口が重要であるのと同じように
 タイトルにあるcognitive/metacognitive strategiesでもその二つの視点が重要
・metacognitionの定義は色々あるがここではシンプルに
 ''cognition about cognition"(p.286)を使用
 メタ認知をする目的はいくつかあるかもしれないけれど(たとえば好奇心から
 行うなど)基本的にはcognitive performance(自身の認知スキル)を向上させる
 ため
、という目的がメインとなる(振り返りのため、評価のため、軌道修正のために
 自分の認知のあり方をメタ認知する・・という話)
・メタ認知のstrategy (p.287)
 "monitoring, assessment, revision of patterns of cognitive processing"
・cognitive strategies(メタではなくて普通の「認知」活動への取り組み方)
 は実は固定されたものではなく、メタ認知を絡めて行くことでその有効性や
 方向性が大きく左右されるものである。どのくらいメタ認知を必要とするかは
 ケースバイケースである
・ほぼ全ての人はある種のcognitive/metacognitiveスキルは自然と
 身につけているものである(記憶するというcognitive行為、自分に適した
 暗記方法を活用しながら「記憶する」ということに取り組むーmetacognitiveな行為)
・とはいえこれらのスキルを新しく「学ぶ」時は
(何を新しく学ぶ際も起こりがちな)以下の課題が生じる場合が多い
 >その手法を受け入れられるかどうかは学習者の「background belief」に
  左右される
 >新しく学んだ考え方は自分のものとして取り組み、実際に活用できるように
  なるまでに練習が必要
 >(特にこのテーマのような知識や理解に関するテーマのものは)
  誤解や偏見を学習者が持っている可能性が高い
・上記の誤解や偏見の事例
 例えば「学習者」という人間に対する理解が2種あったとして:
 A: Incremental learners: 人は困難であっても努力+取り組みを続けて行くと理解に
 到達することができるという考え方
 B: Entity learners: 人は「理解できる人」と「理解できない人」に別れるという考え方
 後者のロジックはmetacognitive misconceptionであると考えられ、
 これを信じている人はその人自身の学び方(認知的な活動)に
 unfortunate influenceを与えているということになる
・そしてcognitive/metacognitiveのstrategyを他人に教えることは楽ではない
 チャレンジは3つ。これらは他の世の中にある様々なstrategyを教えることと
 一線を画するcognitive/metacognitiveスキル特有のチャレンジでもある。
 ①Awarenessの重要性 
  見えないものやふわっとしたものに意識を向けなければいけない
 ②Loadの大きさ 
  認知負荷が重い活動なのでそのスキル使用時はパフォーマンスを下げる可能性がある
 ③Transferの重要性と難しさ 
  strategyそのものは一般論になりやすく、活用できるかにstrategy習得の
  真価が問われる、特に学んだときの状況設定と異なる'far transfer'の環境
  で「つかえる」かどうかが重要
・①の問題に対応するために'pair problem solving'や先生による問いかけを通じた
 考えの可視化、self-correcting feedback loopの仕組みの提供などを提示
 Vygotskyの考え方(social contextにおけるリフレクションやパターン認識の場、
 そして学びを内面化し、個人個人がempowerされる)との親和性も高い、と
・②の問題に対応するために・・・
 #1: 脳のスペースを開けるためにexternal objectsに「ダウンロード」する
 (リストを書き出す、壁に貼っておく、ブックマークしておく、など。
  ポイントは必要な時にすぐ情報を手元に引っ張って来れるようにしておくこと、
  そうすることで今の自分の脳への負荷がその分減るから)、思考プロセス
  そのものも可視化することで(長所・短所のリストを作って意思決定する、
  フローチャートをつくる、など)cognitive loadを減らし、別のcognitive/
  metacognitiveな作業に頭を使うことができる。「ダウンロード」することの
  もう一つの利点として、このプロセス中に私達は常に自分達の考えていることに
  ラベル付け+情報を自分の頭の中でマッピングすることに主体的に関わっている
  という学びにおいて重要な行為が含まれていることも指摘されている。
   #2:「timesharing」する、ある時間にやらなきゃいけないことを分散させる
  何かを学んだ後に5分でもいいから時間を別に取って「何を学んだっけ」と
  考えること。同時に「学ぶ」と「学んだことを考える」をやろうとすると負荷が
  大きいから、という話。自分の高校時代の恩師がノートを見開きで使わせて
  左に授業のメモ、右に追加で自分が考えたことをメモさせる、という形式を
  していたのもきっとこの効用があったと今では思う
 #3: Automatizationする、xxがあったらooする、と自動化を準備する
  とはいえここでは2つ(事前練習の必要性とリフレクションを伴う実施の重要性)
  の難関があるので気をつけなくてはいけない
・③の問題に対応するためにはactivationとcontextualizationの考え方が重要
 これが冒頭のwhenとwhatの話につながる
 そもそもtransferには'low road'のものと'high road'のものがあり
 前者に表現される学びの活用はほぼ自動で起きるもの
 後者ではある事例から抽象化されたコンセプトの抽出と新しい事例での応用を
 個人が意識してしっかりと行うことが求められる。
 学校などの教育の場では前者を意識したものが多い(例えば数学のルールを
 学び、それを応用した形で問題を解く、など)後者に関しては
 Structural Learning Theory (SLT) (p.295)が詳しいとのこと
・activation醸成のために提示されたのがself-monitoring/managementと
 PBL (problem based learning)。どのようにやるかは領域次第とのこと。
・contextualizationをスムーズにさせるために学習者は
 purpose, syntax, actionについて考えることを求め、precontextualizingを
 させる

・我々の取る行動と同じくらい我々の考え方というものは自分のコントロールが
 ある程度できる対象物である。とはいえコントロールするためには自分達の考え方に
 ついて考えることができなければできない
・我々は(自分が)何を考えているか、どう考えているか、どうやったら改善することが
 できるか、ということを知らなければいけない
・"metacognition is the internal managing process that we use to take
    charge of and direct our own thinking" (p.519)
・メタ認知のプロセスで起こること
 identify(classify)、analyze、distinguish component subtasks、evaluate(plan)
・メタ認知の目的:「考えること」が重要な状況における自分達の
 パフォーマンスの向上
・メタ認知は我々が「考える」という行為の「前」「最中」「後」全てで行うことで
 我々の「manage our own thinking」のスキルを最大化させる
・メタ認知をするために必要なことは「考え方」にある様々なタイプの見極めが
 できる力と、ある「考え方」の中含まれている要素を分解して捉えることが
 出来る力
・我々は自分の考えに至るまでのプロセスを言葉にして説明する機会が不足している
 また、常に何らかの「考えること」を行っているにも関わらず、そこに
 意識を向けていることがあまりにも少ない。”attending to our thinking and
   applying the concepts and language of thinking to it"は練習しても
 しすぎることはない。
・ここの事例(小学校向け)で提案されている4つの基本的なto doとしては
 ・子供達の活動を中断させ、メタ認知するような問いを投げる
 ・問いかけの内容も子供達が自分達の考え方に意識を向けるようなものにする
 ・子供達が自分達の考え方を意識しながら参加するような活動をデザインする
 ・振り返り向けのwriting課題をクラスに取り込む
・段階的に「スキルを教える」→「スキルを練習させる」→「スキルを一人でも
 使えるようにしていくサポートをする」と先生は関与度合いを減らして行く

ここまで書いて・・・・あまりにも長くなったので③は省略(笑)
実は他に書きたい事もいっぱいあるので、授業での状況を少し最後に
次のエントリーとして書いて次のテーマ達に進もうと思います。
(24時間後〆切のペーパーが終わったら・・・・)