伸びたT字型の横棒ーCenter on the Developing Childという研究所

たった1年である修士プログラムの学生生活もそろそろ終わりが近づいて来ています.「ここでの体験のbiggest takeawayは何だったか」という問いを聞かれたり、自分で考えることが増えてきました。

実は色々なテーマで思うところはあるのですが(それは別途書こうと思います)知識という側面で答えるとすると(教育の世界において)「どこに何があるのか、誰が知っているのか、何が重要なのか」という全体図(map)がおぼろげながら自分の中で持てるようになったことかな、と思います。

T字型の横棒が伸びたこと

最近いくつかのところで聞く「T字型」の人材という考え方。その横棒のところを伸ばすことが出来たのが教育学部に身をおいた自分のbiggest takeawayだと思います。(Tim BrownによるT-Shaped Starsに関する記事

もともと修士で教育学部に進学する、という決意をした時はT字の縦棒を伸ばしにいくのかと自分では勝手に思っていたのですが、1年のプログラムで実際身につけたのは横棒の部分でした。縦棒は自分の今まで知らなかった世界で少し伸びたものもあったものの、基本的には進学の前に既にあった棒(金融経験で培ったビジネス視点、グロービス経験で培った大人の学びの場づくり、組織の視点を持った上での人材開発)がちょこっと伸びたくらいでした。

縦棒を本格的に伸ばすには博士課程にいくか現場でがっつりと知見を貯めて行く必要があるのだ、ということも改めて理解する経験となりました。

(http://www.flickr.com/photos/beantin/)

その「伸びた横棒部分」の一つ。
  • 自分にとって完全にアウェーだった幼少期教育の世界があります。このブログでも何度か書いた「informal learning for children」の授業では幼少期に与える環境の子ども達への影響力に衝撃を受け、(関連エントリー:「冬期集中講座」「Informal Learning for Children」)その想いに突き動かされるようにして以下のクラスを受講しました。私のいるTechnology, Innovation and Educationのプログラムで同クラスを受講したのは私だけ、笑。人の成長発達過程と学びの関係性を学ぶHuman Development and Psychologyの子達やMind, Brain, and EducationやPrevention Science and Practiceの子達が多かった春学期の半期だけ開催されていたこのクラス。授業のタイトルは「Young Children and Their Contexts: An Interdisciplinary Investigation of the Origins and Implications of Risk in Early Childhood」
  • 「TomokoはAdult Educationフォーカスだったはずだったのになんだか色々変わったことをし始めたぞ」と周りに面白がられました。
  • このクラスは半期なのでこのテーマをがっつりと取り組みたい人にとってはもしかしたら浅すぎる内容だったのかもしれないのですが、幼少期の発達について全く知らなかった自分にとってはとても面白い世界を見せてくれるクラスでした。(過去のエントリー:「子どもの頃の体験と今「Young Children関連動画」
  • 何よりも、貧困や暴力といった子ども達にとっての「リスク」と隣り合わせの生活をしている国々・地域から来ていたクラスメート達にとても多くのことを教えてもらいました。どれだけ日本が恵まれているのか、どれだけ自分の見えていた世界・課題意識を持っている諸問題が世界全体で見たときに「贅沢な悩み」なのか、ということを毎回しみじみと感じることができました。

ハーバードのCenter o the Development Child

で、前置きが相当長くなってしまったのですが、そんな興味もあって、ハーバードにあるCenter of Development Childという研究部隊と以下のような流れで関わることになった、という話です。

こんな、流れでした。

インターンは「これ、私の大学院生としてこういう時間の使い方していいのかな?」と一瞬疑問を感じてしまうような単純作業の積み重ねでしたが、当日のカンファレンスで見聞きしたことはもちろん、ここのセンターの中の人と関わり合い、短期ではあったもののボスととても良好な関係を築けたことは(その関係を将来使うことになるかはもちろん分からないけれど)とても貴重な財産となりました。

実はハーバード教育学院のスローガンは「working at the nexus (融合する世界)of practice, policy, & research」なのですがそれが故に?自分の興味分野に世界が狭まってしまうリスクがあります。1年プログラムなのでどうしてもしょうがないのですが。

とくに私の印象ではK-12(小学校前〜高校)を専門分野としている人、しようとしている人(教師として、校長として、地域のSuperintendentとして、政策立案者として、起業家として、コンサルタントとして)がとても多く、彼らは彼らの目指す形に必要なものを中心に活動範囲を定めていきます。(TIEだけは色々な人がいるので決まった形がない比較的変わったプログラムです)

Center on the Developing Childの存在を知っている、または関わっている人も幼少期の人間発達に興味がある人、心理学や生物学、遺伝子学などに興味がある人に比較的限定されている、そういうイメージを自分は持っています。

でもこの研究所、結構凄いところで、教育学部所属の研究所Project Zero(関連エントリー一覧)と同様ですが、教育学部に在籍するより多くの学生との間にもっと太いパイプがあってもいいのにな、とも感じました。

在籍中はここのリソースをほとんど活用できませんでしたが今後必要がありそうな時はこのサイトを頻繁に訪問してみようと思っているとこです。webinarなども頻繁に開催され、アーカイブされているのでそれも卒業後も見てみようかな、と思っています。

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同研究所に関する備忘メモ(サイトより)
  • 2006年設立
  • ハーバード各大学院と提携先の病院との知見の交流
  • 心身共に健全な子どもを育成することがが社会全体に与える影響を重視する
  • 「健康」「学び」「行動」という各分野の研究内容を総合的に活用し革新的な施策のデザイン、実行、検証を目指す、政策立案と研究の橋渡し、上記を実行に移すリーダーの創出をサポートする・・など
  • なぜ今こういった動きが重要か(原文のまま)
    A remarkable explosion of knowledge about the developing brain and the human genome, linked to advances in the behavioral and social sciences, offers policymakers, civic leaders, and practitioners exceptional opportunities that did not exist a decade ago.
    Science shows increasing promise for improving our understanding of how the foundations of successful adaptation and effective learning in the childhood years lead to better outcomes in academic achievement, economic productivity, responsible citizen-ship, lifelong health, and successful parenting of the next generation.
    Through building, teaching, and applying this growing knowledge base, we have an unprecedented opportunity today to shepherd a science-driven era to promote the healthy development of all children, particularly those whose life prospects are compromised by significantadversity.
こういうのを読むと(そしてこういう取り組みを目の当たりにすると)T字型の縦棒を研究という形でぐいぐいと伸ばしていらっしゃる世界中の各分野の研究者の方々に対して改めて「すごい」という気持ちにさせられます。
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修士課程では縦棒を伸ばし続けていたに違いない、と思われている方にこの経験をどう説明するのかがちょっと難しいのですが・・これからのびのびと横を伸ばしつつ、コツコツと自分のペースで何らかの縦棒を伸ばしていきたいなと思っています。