英語でいうCharacterの日本語の直訳が良く分からないのでタイトルには「Character」とそのまま使ってみたけれどここでいうCharacterは人格、人間性といった意味。日本語の「キャラ」「個性」というのとはちょっと違うもの。
こういうことを考えるきっかけになったのは、社内の会議の事前資料として読むように、と言われたNYTの記事。この記事は2011年9月14日のものでPaul Toughという作家が書いたものだという。
「What if the Secret to Success Is Failure? 」(もし成功の秘訣が失敗だとしたら?)
このPaul Toughのプロフィールを見てみると著書に①「Whatever It Takes: Geoffrey Canada's Quest to Change Harlem and America」、②「How Children Succeed: Grit, Curiosity, and the Hidden Power of Character」が挙げられている。
このGeoffrey Canada氏はアメリカで教育に関わっている人の間では知らない人はいないのではないかと思うくらいの有名人。実はHGSEの卒業生だったりする。(HGSEのMedal for Education Impact受賞者)
彼の功績や映画「Waiting for "Superman"」TEDトークなどはいつか書きたい・・・(New York Timesの記事)(興味がある人はこちら▷「Waiting for the Super Hero」「Our failing schools. Enough is enough
今日はこのTough氏の投稿したという記事について。
簡単な背景情報の整理
(記事はほとんどアメリカのことを意識して書かれたものだけれども日本を含む他の国に当てはまる部分が非常に多いと感じたもの)
・世間一般的に「成功している」と言われた/言われている人達は本当に人生で成功しているといえるのか
・IQ偏重型の教育の有効性が疑わしい
・IQという指標は人間としての成功を測る指標として不十分である
・Character evaluationという評価の在り方が必要になっている
・GPA (Grade Point Average、加重された評定) ではなく、CPA (Character Point Average)という新しい考え方(定量化すべきかという点に関しては賛否両論あり)
・CharacterにもMoral Character (fairness, generosity and integrity)といったMartin Luther King Jr. やGandiなどをイメージするものとPerformance Character (effort, diligence, perseverance)をといったSteve JobsやBill Clintonをイメージするものがある
・Characterは時に強みとなる時もあるし、弱みとなる時だってある
・特に「self control」と「grit」の二つが重要である
・「grit」(粘り強さ、打たれ強さ、情熱)を持つ努力家が真の意味での成功者となりうるのではないか
・Self-talkというテクニックをつかったCognitive behavioral therapy (C.B.T)
・苦難を乗り越えるために必要な力を身につける機会が現代社会には不足している
記事のポイント
・子ども達にはIQを高めることではなく、真の意味で人生で成功を収めることができるように、重要になるCharacterを養成する機会を提供することが重要だ
・真の意味で「成功する」ために必要なCharacterの中には特に失敗した時にも前を向いて立ち上がることのできる、というものが含まれている
・「Parents who, while pushing their children to excel, also inadvertently shield them from exactly the kind of experience that can lead to character growth. 」※「親の気持ち子知らず」ではなく、「子のリスク親知らず」状態
・「Overindulging kids, with the intention of giving them everything and being loving, but at the expense of their character — that’s huge in our population. 」※甘やかし、Characterを犠牲にしている保護者達の多さ
・「what kids need more than anything is a little hardship: some challenge, some deprivation that they can overcome, even if just to prove to themselves that they can. 」※これは自己効力感を育てるためにも重要な気がする(関連エントリー「自己効力感とは」)
記事に紹介されていてちょっと気になった参考資料
・書籍「The Price of Privilege: How Parental Pressure and Material Advantage Are Creating a Generation of Disconnected and Unhappy Kids」
※以前ブログに書いてかなり多くの人に読んでいただいたらしい「精神科医からのメッセージ」に関連する話だと思う
所感/メモ
・そもそもKIPPといったアメリカでは比較的成功していると理解されている教育システムの現場の校長を含む現場の人が疑問を呈したということが興味深い(KIPPについて京大の方が書かれたブログはこちら)これは成功していると思われているシンガポールの教育に関わる人達が同国の教育システムの見直しを始めたという話を連想させる(関連エントリー「シンガポールの徹底された国家戦略(教育)」)
・かつその校長はその疑問をモヤモヤで留めたばかりではなく行動(調査、修正案の立案、プロトタイプ実施、フィードバックの収集)している、というところが素晴らしい
・同様の課題意識を抱いていた校長二人がそれぞれ違う解決策を見出し、導入していったのというのも面白い
・もともとIQが不十分だ、というのはEQやMQやCQなどの見方が世の中に出て来ているのからも驚きはない、実際に世間一般的に成功している、と言われている人達が精神を病んでしまうような状況に陥ったり、死ぬ時は実は独りだった、みたいなエピソードもたまに聞く。とはいえ、不十分だからといって、早い段階でどうするべきか、という話を聞く機会はあまりなかったので新鮮だった
(IQ偏重型に疑問を呈している人はたくさんいるけれども、個人的にはMIT Media LabのJoi Ito氏とMimi Ito氏という対照的な二人が対話をしているInterest Based Learningについてのビデオが特にオススメ。関連エントリー「Resnick教授によるMOOCメモ①」)(また学校になじめなかった13歳の少年による「Hackschooling Makes Me Happy」というTEDxトークもInterest Based Learningを追求した事例として衝撃もの)
・記事にあって面白かったのは、国/文化/時代を超えた研究結果をまとめた結果以下の24のCharacterの強みが共通していたということ
・その24を7つに凝縮: ①Zest(熱意)、②Grit(気概)、③Self-control(自制心)、 ④Social Intelligence(※これは日本語に訳しにくいのでオリジナルの24を参考にすると The ability to recognize interpersonal dynamicsだったりAdapt
・特に今の自分に一番刺さったのは以下の二つ
一つめ:「Looking back on his life, though, Randolph(記事に登場する校長の一人) says that the character strengths that enabled him to achieve the success that he has were not built in his years at Harvard or at the boardingschools he attended; they came out of those years of trial and error, of taking chances and living without a safety net」※「試行錯誤していた数年、safety netの存在しない環境でチャレンジをしながら過ごしていた時にこそ、彼は彼自身のCharacter Strengthを培った気がする」と。前回のエントリーで私は「自分は失敗経験が足りない」と書いたけれども、おそらく自分にCharacter Strengthが足りていないと内心感じていることと今回の話がつながっていると思わされる内容。
二つ目:「grit and self-controlis built through failure」※ 「7つの要素」で今自分に欠けているのは②と③で。それはやはり失敗経験が絶望的に不足していることに起因すると感じてる。
一つめ:「Looking back on his life, though, Randolph(記事に登場する校長の一人) says that the character strengths that enabled him to achieve the success that he has were not built in his years at Harvard or at the boarding
二つ目:「grit and self-control
・最後に参考までに「Grit」に関するAngela Duckworth氏のTEDトーク。彼女も「IQ is not the indicator of success」「Character is at least as important as intellect」「Self Control is important for basic successes but not sufficient for outstanding achievement(つまりGritもなくてはいけないと)」と言っている。彼女は無料で「Grit Scale」という心理テストを公開中。