緒方貞子さん、NHKスペシャル番組、NYの勉強会で

ニューヨークに戻ってから二度目の週末です。

ようやく引越し後の初洗濯+初ネイルも終了し、体調不良時期も改善に向かっていて、落ち着きつつあるかも★という土曜日です。東京にいる時はあまり取れない「一人の時間」というものがニューヨークではたっぷり取れそうで、これからの数ヶ月〜は色々と貴重な時期になりそうです。読書や映画鑑賞などをもっとしていきたいと思っています。

国連フォーラム勉強会主催のイベント

さて、東京では興味があるセミナーなイベントに良く足を運んでいた自分ですが、ニューヨークでも機会があれば、面白そうなところには行きたいなーとぼんやり思っていたところ、日本にいる親友から「こういうのあるみたいだよ」と紹介が。その名も「国連フォーラム勉強会:「リーダーシップとは『NHKスペシャル 緒方貞子 戦争が終わらない この世界で」に基づいて」」・・・・・第一印象はアウェー感満載のイベントかなぁ、といったもの。

その子はHuman Rights WatchというNGOで働いていることもあり、こういう世界は日常茶飯事なのかもしれませんが、一つ前のエントリーで書いたように、私はようやくAcumenというNPO(しかも金融/ビジネス色濃いNPO)に慣れ始めたところ。うーん、どうしようかな、と思いつつも参加申し込みすることに決めました。

「2時間半程度、国連事務局の会議室の一室で40名弱の日本人が上記のNHKスペシャルを鑑賞し、その後自由意見交換をする」という内容のもの。そもそもどういう人が来るのだろう、ということや、意見交換なんて参加できるのかしら、自分・・という不安があり。当日の金曜日も終業時間が近づくにつれ、段々と足が重くなり始める自分。一週間の仕事で結構疲れてるし、体調もあまり良くないし、テーマもやはりどう考えてもアウェーだし、と、会場に入った後も往生際悪く「やっぱり帰ろうかな」とすら思っていました。

・・・と、そんな感じで参加したイベントだったのですが、会場を後にする頃には学び多き充実した時間だったな、と感じたので、その経験をまとめようと思います。

「戦争が終わらない この世界で」

実はかなり恥ずかしいことなのですが、自分は緒方貞子さんが具体的にどういう事をされていて、どうしてあんなに世界中で尊敬されているのか、今回のNHKスペシャルを見るまであまり知りませんでした。もちろんお名前を聞いた事はありましたし、凄い方として世界で認識されているとは理解していましたが、自分の緒方さんに対する理解は、おそらく例えてしまうと、自分のマザーテレサに対する理解と同じくらい漠然としたものだったと思います。(Wikipedia「緒方貞子」

その緒方貞子さんという方のことをこの機に良く知ってみたいということと、こういうところに来る日本人はどういう人がいるのだろうということ、が参加を決めたきっかけでしたが、加えて、タイトルにあった「戦争」というキーワードに引っかかったというのもありました。

一つ前のAcumenのエントリーでも書きましたが「自分が経験していないもの、見聞きしていないものに対して、想像力を働かせること」「自分の知らない事に心を向けること」ということが最近の自分のテーマになっているようです。知らない事ばかりのニューヨークにぽつりといるのでなおさらそういう気持ちになっているのかもしれません。

関連した話だと、最近Twitterで「さとーさん@海外ニュース用」という方に出会うことがありました。この方は色々なNAVERまとめをつくってくださっているのですが、これらを通じて私は今までほとんど知らなかった世界の出来事の片鱗(具体的なエピソード)を知ることができました。

NAVERまとめ:早期結婚・暴力・・・シリア難民が送るあまりにもつらいヨルダン生活
NAVERまとめ:シリア内戦で青春も命も犠牲になっている子供達
NAVERまとめ:凄惨極めるエジプト国内で実際に起こっている虐殺

もちろんここに書いてある事を全て鵜呑みにすることのリスクはあるのだと思いますが(ここに取り上げられている国の中でも色々な地域や状態があると思うので)、最初の一歩としてこういう普段の自分の日常生活で思いを馳せる機会のない話を自分のアンテナに引っ掛けることができたことは有り難いことだなと感じています。

特にテロや戦争を含め「死者●●人」というニュースが日常茶飯事になっている地域の話はこういう具体的なストーリーに触れることでもしないと、人の命を「数字」という無機質なものとして処理してしまうような危険を感じます。例えば日本で二人の兄弟が餓死してしまったというニュースに自分が感じるものと、パキスタンの自爆テロの巻き添えを受けて死んでしまった子ども二人に対して感じるもの。本来一人一人の命の尊さは違わないはずなのに、自分の感じ方は同じだろうか?最近のシリアの話などを聞く度にそんなことを思ったりします。

ということで、国連フォーラム勉強会のテーマにあった「戦争」、平和な日本、その国で1980年代に産まれた自分にとって遠い世界である「戦争」。でもこの世界はまだまだ「戦争が終わっていない」状態。むしろシリアやエジプトなどは激化している状況。そういう現実に対してもう少し具体的なイメージを持つきっかけになれば、と思ったのが、このNHKスペシャルを見てみようかなと思ったきっかけでもあります。

NHKスペシャル番組

時間がキツキツということで、上映がすぐ始まった勉強会には世界銀行やUNHCRやNHKの方々といった大ベテランの方々もいらっしゃいましたが、全体的に参加者は若い印象。自分と同世代の方々もいる一方で、20代半ばじゃないかな、という少し若めの方々が多かったです(男女比は4:6か)。

この90分のNHKスペシャルは8月17日に日本で初上映されていたものらしいのですが、もともとテレビをあまり見ない上に一時帰国中はそれこそほとんど家にいなかった自分は、この番組があった事すら知りませんでした。

上映会の後にスカイプで今回の番組を企画され、取材に行かれていたNHKのチーフディレクター小山氏との対話の時間があったのですが、小山氏曰く、この番組はオンエアされた二回とオンデマンドを合わせて最低1000万回以上視聴されているとか。この機会に自分も見れて良かった、心底そう思いました。

小山氏は色々なエピソードを共有してくださったのですが一番印象的だったのがこの番組の構成をドキュメンタリーとドラマで構成した理由。単語一字一句は覚えていないのですが「終戦記念日の特集ということで毎年どういうものを創るか考えるのだが、『戦争』というテーマを扱う内容のものをつくっても、そのテーマを汲み取る力が全体的に今の社会にはない。そういう状況を踏まえてどうやったら視聴者にメッセージを受け取ってもらえるか、そういうことを考えていた(昨年渡辺謙さんとつくった「渡辺謙アメリカを行く “9.11テロ”に立ち向かった日系人」も同じ、と)」「戦争というものを点としてではなくて線としてずっと見て来た人は誰か、という視点、そしてリーダーシップという普遍的なテーマに関わって来た人は誰か、そういう視点で緒方貞子さんが候補になった」「緒方貞子さんを知らない世代向けに臨場感を出したものをつくりたかった。・・・まさに、緒方貞子さんを良く存じ上げず、かつ戦争というテーマを汲み取る力の弱い私にとって刺激に満ちた、素晴らしい番組に出来上がっていました。NHKのオンデマンドをこれからニューヨークにいる間もっと見るべきかも、と本気で思ったくらいです。

印象的だったQuote

この番組を見た方もいると思いますし、見てない方もいると思うので、ここでは印象に残った台詞のみメモします。それにしても曾祖父が犬養 毅だったとか、国連に初めて関わるようになったのは41歳、国連難民高等弁務官に就任されたのが63歳など、知らない事だらけで本当自分の無知っぷりが恥ずかしくなりました。

「決めなきゃいけない、トップというのはそういうこと」「情報を全部集めて・・・最後は勘」「女性の生き方。自立、知的、協力的 by マザーブリット」「どんなところでどんなことをするようになっても、その場で灯を掲げる女性になりなさい by マザーブリット」「内向きは無知につながる」「まずやると決めて動き出す」「隣の人は自分と同じと思わない方がいい」「偉人、異人」

その後勉強会の会話で出て来たコメントで印象的だった緒方さんの発言や緒方さんに関する形容詞:「女性には女性のサイクルがある、焦って目標を決めるより、自分のサイクルに沿って前に進めばいい」「(日中関係の現状について)争いを好む感じって(日中両方に言えること)なんかいやよね」「日本人として、とか国籍にこだわらないグローバルシチズン」

本当「素晴らしい」なんて平凡な形容詞一つでは表せないくらい、緒方貞子さんという方は多くの、本当に多くの人の心に勇気と希望を与え、これからもずっと与え続けてくださる人なのだな、と感じました。現在85歳。緒方貞子さんという人やその人の生き様に触れた人間の心の中に「灯を掲げ」続ける女性。日本という国籍や女性という性別にまったくとらわれない生き方をしている緒方さんですが、日本人女性という括りの後輩として、背筋が伸ばされる気分にもなりました。

こんな素晴らしい企画をして番組を創ってくれたNHKと、無料でこのようなイベントを開催してくださった国連フォーラム勉強会運営の皆様に心から感謝です。



おまけ:上映会の後、質疑応答の時間があったのですが最初の質問者の5人うちの私を含む4人がなんと様々な大学院の教育学部の人で(国際関係とかでなく!ちょっとびっくりしました)帰り道にそこで出会った別の学校の教育学部の人と「なんか(教育学部の人達が積極的に発言してたのが)嬉しかったね」と言い合いながら帰りました。教育学部生に会うとなんかものすごい親近感を感じてしまう今日このごろです。