Room to ReadのJohn Woodがランチに来た

うっすらとは知っていたRoom to Readの存在と活動。その創業者であるJohn Woodがアキュメンのランチ勉強会にやってきました。

ちょうどその数日前にハーバード大のSouth Asia Instituteで「12年間に学んだ12のこと」というプレゼンをしたばかりのJohn。そこで伝えたという「シンプルな教訓」のいくつかを共有してくれました。そのJohn Woodとの時間で学んだこと、感じたことをまとめてみようと思います。

Room to Readという組織からの学び

彼が言っていたことで普遍的なものだな、と感じたもので印象に残ったもの:
①BHAG (Big Hairy Audacious Goal):目標は高く
②強い仲間は不可欠、組織のalumniも巻き込み活用
③ローカル(現場を知っている)人の価値を理解すべし
④牛乳(時間がたつと腐る)ではなくワイン(時間がたつと価値が上がる)的な組織づくりを

NPOとしてすごいと思わされたところ。話を聞いているacumen陣営からもため息がもれるほど:
・overhead(本部運営)コストを限りなく抑える(寄付者側からもらえるマイレージ、ホテルの部屋などもフル活用で出張はゼロコスト)
・fundraisingにおいてのinnovativeな仕組みづくり(結果として10年で215M USDのファンドレイズ)
・米国のNGOのたった2%しかもらえないCharity Navigatorでの4つ星ステータスを7年連続維持
・世界中10カ国にいる12000人のボランティア、57のファンドレイジング委員メンバーが存在
John Woodの著書

John Woodという組織のリーダーからの学び

そんなJohnが言っていた「人材/人財」に対する以下の点が特に印象的でした:

①なぜ採用時にpickyである(妥協せずに欲しい人材を探す、招く)べきか
Johnの仮説、それは「Aレベル(最高)の人材はAレベルの人材を採用する」+「Bレベル(中堅)の人材は(自分の立場を維持するために)Cレベルの人材を採用しようとする」というもの。彼はそう考えているから常にAレベルの人材を組織にそろえていないといけない、という話。

②誰に取っての組織であるべきか
Johnは「リーダーとしてhow you make their employee feelのみならず、how you make their family feelということを意識している」と言いました。具体的に彼はその気持ちを体現するために直筆の社員への感謝カードというものを社員のオフィスの机ではなく自宅に送っているそうです。数時間かかるこのカード書きの時間はどんなにファンドレイジングのために世界中を飛び回っていても減らさないのだとか。

Room to Readで働いている社員が家に帰ったときに「今日はどうだった?」という問いに対して「今日もほんと、疲れたよ」と社員に答えさせてしまう組織なのか、それとも「今日もとても充実した一日で働きがいがあった」という発言をさせてしまうのか。また、その社員に直接「いつも素晴らしい働きをしてくれてありがとう」と家族の前で伝え、それを見る家族の気持ちを察することの大切さ、そういうことをJohnは意識しているといっていました。

一方でこの「感謝」の文化、Johnの目下の悩みは他のリーダー達を含めたメンバーにどう共有してもらうか、ということらしく。毎日忙しく、目の前のことに追われる傾向のあるリーダー達にどう、立ち止まり、周囲を見て、感謝の言葉を口に出してもらえるようにするか、どのようにそういった組織文化を醸成するべきか、ということを考えている、とのこと。組織文化というのはなるべく組織体が小さい時から植えて行くべき、と言った言葉が印象的でした。

そんなカリスマ創業者といわれた彼も4年半前にCEOの立場を退きいています。有名なJim Collinsの著書にあるフレームワークを使いながら自分の「Uniquely good at(自分にしかできないこと)」「Passionate(自分がやりたいと思うこと)」「Resource engine(自分にリソースがあるかどうか)」の3つを考えたとJohnはその決断の背景の一部を説明してくれました。

結局外部からのプッシュと自分の中の決断を合わせ、結局自分が得意である「アイディア伝達スキル、人を巻き込む力」を最も活用できる今のポジション(世界中を飛び回りファンドレイズする役割)にJohnはCEOから異動。ついつい今でもオフィスに遊びに行くと口出ししたくなるときもまだたまにあると言いながらも、基本的には後継者である元COOに全てを任せ、自分は自分のできるところでRoom to Readの発展に貢献する日々を送っているそうです。(この後継者を絶賛していました)

「寄ってくる」人達

そんな彼にacumen側から「今までで一番辛かったことはなんですか?」という質問がありました。

Johnの答えは立ち上げ当初時。元々Microsoftで出世頭のマネージャーというポジションにいたJohn。それを捨ててNPOの世界に行ったとたん、それまで自分にまとわりついていた人のほとんどが去っていったと言います。そのときの孤独がやはり辛かったとのこと。

近年Room to Readの成功を見て「成功したのはJohnがMicrosoft時代の人脈をレバレッジしていったからでしょ」と言う人もいるらしいのですが、Johnは「むしろMicrosoft時代に培った人脈でRoom to Readの初期時代に活用できたものはほぼゼロだった」と否定します。そのくらい最初は「今まで自分に寄って来た人達は自分の肩書きが目当てだったのか、、」と思うことが多かったようです。

で、最近はRoom to Readも知名度が上がり、逆に色々な人が協力を申し出てくるみたいで、別のチャレンジもある、と言います。「ボランティアやサポートなどを申し出てくれる方は多いのですが本当に必要なときに立ち上がってくれるメンバーばかりかというとそうでなかったりします」Acumen側の人間の多くもこの点についてうなずいていました。

本当の意味での「仲間」になりたいと来てくれているのかどうか・・・・自分達の取り組みや思想に共感してくれて、そばにいたいという人と、共感してくれて自分で腕まくりして土を掘るの手伝いますぞという人と・・似ているようで違う「近づいてきてくれる人達」。見極めって結構難しいですよね。しかも前者から後者に途中で変わる人もいるかもしれないし。

そんなことを思ったJohn Woodランチでありました。

Room to Readは今まで780万人の子ども達の人生に触れ続けてきており、
その数を2015年までに1000万人にする、というゴールに向けて加速を続けています。
具体的に建てた学校数1681校、図書館15320棟、配布した書籍1330万冊。
キーワードはliteracy格差の縮小、girls educationの強化、など。

Room to Readの各種プログラム情報はこちら
PBSの取材(14分)を受けているJohn Woodの動画はこちら
日本でも結構活動が活発なのでご興味があるかたはこちら