Instructional designer(教育設計・インストラクショナルデザインをする人)というキャリア

社会人になってからの5年までの私のアイデンティティの一つは「(外資系)金融の人」だった。 そのあとの二年は「人材・人財育成の人」。そして「大学院で海外に行った人」(「日本の高校から海外の大学に留学した人」も)。 大学院を卒業してからは「ニューヨークにいる人」「元金融で教育学修士とった人」というラベルが追加された。

Acumenに入ってからの直近の5年には「NPO・ソーシャルセクターの人」「インパクト投資セクターの人」「海外で働く日本人(女性)」「オンラインコースデザイナー」「EdTechの人」が加わってきて。いつ、どのように人と出会ったかによって、その相手が私のどの部分を知っているかが結構違うようになってきたのがおもしろかったりもする。

とまあ、他人が自分に関するどの情報を手にしている&親近感を感じているかは色々あっていいのだけれど(全部が私という人間だし) 自分では、自分の職業面でのアイデンティティで一番濃いのは「Instructional designer」だな、と思っている。

日本語に変換すると「学びの場をデザインする人・教育設計する人」。

学びの場をデザインをする時に使うスキルは、①どういう「学びの場」なのか、②誰の為の「学びの場」なのか、のかけ合わせで色々なシーンで使うことができる。

そんな様々なシーンで、毎回最終ゴール(対象層に得てもらいたいもの、知的面・感情面の両側面において)のために創造性を駆使しながら場を創る仕組みを用意するのがinstructional designer。科学と芸術のバランスをうまく舵取りしながら場づくりする、という点や提供者としての経験とある程度の創造性が求められるのという点では「講師・ファシリテーター」とも似通うものが少なからずあるようにも思う。

私は結構飽きっぽいから、こうやって様々なシーン・チャレンジを体験できる仕組みになっているキャリアの道が向いている。(多分PR・広告代理店業界の人とか、書籍・雑誌の編集者とか、各種イベントコーディネータの人たちがその道が好きなのもきっと似ているのではないかな、と思ったりする)

そして自分なりに工夫を凝らして創り上げた・産み出した学びの場を体験した人たちが短期的に、中長期的にどう反応するのかを目の当たりにできるのも、とても気に入っている。

これまでに色々な「食材」の「調理」を体験してきた。

2時間のワークショップだったり、3日間の全社員リトリートだったり、400人が世界10数ヶ国から集まる1週間の同窓会だったり、無料で公開されている6週間のオンラインコースだったり、1年に5回1週間ずつ20人が集まるリーダー育成プログラムであったり。最近はとある教育プロジェクトへの選抜メンバーを決めるためにデザインした「試験タスク(模擬学習コンテンツを使用)」をつくってみたりした。

今のところ私の体験の大半は大学院生以上の大人向け(一番上で社会人歴25年くらいの対象層)のもので、言語は日本語と英語なのだけれど、必要であれば小学校〜大学生とか、組織に属している、または起業している社会人以外の大人向け(例えば働いていない主婦とか、地元のretired individualsとか)とか、まだ触れたことのない「食材」はいっぱいある。

いつまでこのinstructional designerというキャリアを歩み続けるのかは分からない。 でも「自分の30代前半はînstructional designerとしての経験を積んだ時期だったな」とは言える気がする、と30代半ばの折り返し地点を目前にふと思ったりした。

Photo by Eugenio Mazzone on Unsplash

20代は横に伸びる一方だった自分の「T字」の縦棒が少し伸びている感触。
過去エントリー:伸びたT字型の横棒

参考情報(英語)




参考情報(日本語)
  • 「教育工学の中でも心理学をベースにしたインストラクショナルデザインという分野」と説明されている早稲田大学人間科学学術院 向後千春研究室のブログ
  • 「インストラクショナルデザインは、教育が必要とされる様々なシーンにおいて、学習者の高い習熟と行動変容を目標として、より効果的・効率的で魅力的な学習環境を設計・開発するための、システム的な教授方法・ガイドラインのこと」と説明されているビズリーチの記事
  • 「「人はいかに学ぶか」「学習とは何か」という問に対峙し、より良い学習の環境を総合的にデザインすること」と記載しているWikipedia