「解像度高く」他者を理解するきっかけとなるツール4つ

色々なことが起きている中、ブログでの整理がキャッチアップできていない2020年。今日は表題のテーマについて。

以前「2019年の振り返り(トップ10)」で書いたように、元同僚・証券会社時代の戦友が始めた「チームを育てるリーダーになりたい」人向けのスタートアップ、CoachEd(コーチェット)のお手伝いをしている。そのメンバーとの話し合いで、よく聞く「解像度高く」物事を捉える、という言い回し。

これは「白と黒じゃなくて、その間に存在するものも大切にしよう」という考え方や「物事は複雑に絡み合っていることが多いから、表層的に見えるものだけではなく、その裏に隠れているかもしれない複雑な関係性も意識していく必要があるね」というシステム思考の文脈にも近いものがあり、自分が日々の業務や趣味のpodcastのedamame talkでも大切にしているものである。(過去エントリー:白でもなく黒でもなくアトピー対策にシステム思考を応用すると

そんな「高解像度アプローチ」を家族、恋人、近しい友人、同僚、部下上司など接点がもともと多めの相手に応用するときに便利、と思ったツールにここ数年出会うことが続いていたので、今回はそれらを整理するエントリー。

相手と関わってきた期間が長かったり、関わる機会の頻度が多い相手に対して、「私は●●のことを良く知っている」と過信してしまったり、関係性が良好だからと「自分と考え方・感じ方が似ている」と誤った思い込みを持ち続けるという罠に陥りやすい。だからこそ「あれ?」と新たな視点を得るきっかけづくりになる便利なツールたち。興味がある人はぜひお試しを。

以前友人たちがプレゼントしてくれた色々な思い出写真のコラージュ

1. Keirsey Temperaments Sorter

まず一つ目は会社の研修で受ける機会があったKierey Temperaments Sorterテスト。The Keirsey Groupという会社が提供しているもので(website)その仕様は比較的有名な別のツールMeyers-Briggs Type Indicator(MBTI)と似ていて、両方を一つの図にまとめて比較した図を作ってる人もいるくらい。

ただMBTIは人が「どう考えたり、感じたりするか」を元に分類をしているのに対し、Keirseyは人が「どういった行動をとるか」を元に分類をしているという違いがあるらしい(もちろんそれ以外もあると思うけれど)。

そんなKeirseyのアセスメントの結果は大きくGuardian・Idealist・Artisan・Rationalの4つに分類される 。それらはそれぞれど違うかというと、コミュニケーションで優先するもの(具体的 vs 抽象的)と、意思決定をする際に優先するもの(正しいことをするべき vs 機能するものをするべき)という軸によって分類される。(ウェブサイトの解説のほうが丁寧で正確)

参加した研修で聞いた「サンタクロースが住居不法侵入で逮捕された時」のシナリオを使った4タイプの整理がわかりやすかったので、それをここに再現。

Keirseyの4つのtemperamentを理解するための例

またYouTubeでも紹介されている動画も参考に。


ちなみに私はidealistのカテゴリーで、最終的な16分類の中ではteacherという判定になる。Keirseyのwebsiteには16パターン全てのものについてざっと説明があるものの、有料のアセスメントを受けると、何ページかの比較的内容が濃い判定結果を手に入れることができる。例えばteacher型の私がartisan系の人を部下に持った時にどういう点を意識したほうがいいか、などのtipsも含め。

Keirseyの4つのtemperamentを
さらに16タイプへ分類したもの

ウェブにあった無料版
をやってみた。私はTeacher、パートナーはHealerというIdealist家庭。

同僚の間でも試してみて、改めて彼らのコミュニケーションスタイルであるとか、課題がチーム内で勃発したときに、各々のメンバーがどういうスタイルで課題を解決しようとするか、なぜそれらが違ってたまにコミュニケーションミスが発生するのか、会議が長引くか、など改めて新しい視点で捉えることができて有益だった。

2. HSP(Highly Sensitive Person)診断テスト

二つ目はどこからか流れてきたこちらのテスト。HSPは「良い刺激にも、悪い刺激にも強く反応する強めの感受性を持っている人達」を指し、人口の約15~20%の人が持っているといわれているらしい(wikipedia

私と家族が使ってみた無料版によって出された以下の結果は、「ほぼイメージ通りだね」と皆で納得の内容。

「悲しい」「辛い」系のニュースや映画をみても全然へっちゃらの私と、そういうものは極力避けたい彼。「最悪のシナリオ」をイメージして自分を鼓舞する私に比べ「最悪のシナリオ」を考えちゃうと気分が落ち込み前にすすむエネルギーが逆にそがれる彼。

一緒に住み始めてから色々気づいた「なんか私と物事の捉え方とか感じ方が違うかも?」がある種の形で見える化されたのは面白かった。我々の76と41の差は小さくない一方で、妹のところの110と0の組み合わせもなかなかの仰天もの。

自分と他の人は、物事の対する捉え方や物事との最適な距離感などがこうやって違うんだな、という気づきを得たり、今後相手の発言や立ち振る舞いを解釈するときにそういった感受性の違いを念頭にいれよう、という気にさせられる。

3. The 5 Love Languages 

Dr. Gary Chapmanが提唱している考え方で最初に知ったのはニューヨークタイムズ紙の記事の中。考え方はシンプルで、人がどういう時に「ああ、大事にされている・愛されている」と感じるかは大きく5つに分かれるというもの。

その5つは:
  1. words of affirmation - 励まし・応援・受容といったポジティブな声がけ
  2. gifts - プレゼント
  3. acts of service - 手伝い・気遣いの姿勢
  4. quality time - 一緒に過ごす有意義な時間
  5. physical touch - 身体的な触れ合い
自分にとってその5つがそれぞれどのくらい大事か、といった優先順位と相手の優先順位が同じではないのに「私は●●されたら嬉しいから、あなたもそれをしてもらったら嬉しいでしょ」という間違った前提を持って相手と関わり続けていたらすれ違いや喧嘩の原因になるかもしれない、ということに気づかせてくれるアセスメントツールだ。

無料テストはこちらから。夫婦やカップル間だけでなく親子間やシングル用にも存在する。
我が家ではプレゼントの必要性は低い、笑

私のパートナーにはポジティブな声がけが結構重要ということが伝わってくる。批判的なチクチクは以下のPQの結果にも重なるのだけれど取り扱い要注意のsensitive boyだ(そしてsensitiveという形容詞を使うこと自体にも注意しなくてはならない相手でもある、笑)

4. PQ (Positive Intelligence)のSaboteurテスト

これはコーチとして有名なShirzad Chamine(シャザド チャミン)が提唱しているPositive Intelligence(PQ)関連のテスト。Saboteur(サバター・サボターと発音)という単語は動詞のSabotage(動詞の意味は「妨害行為をする」)からきている。英語の発音が結構難しい・・。

PQは認知心理学、ポジティブ心理学、神経科学とPerformance科学をベースにした考え方で、非常にざっくり説明すると
  • 「人は皆、前に進んでいくために必要な5つの力(Activate・Explore・Innovate・Navigate・Empathizeする力)を本来持っている」という点と
  • 「同時に、我々は皆、前に進むことを妨害するものを抱えている」という考えをもとに
「ポジティブな5つの力を伸ばし・育てていきながら、我々がそれぞれ抱える妨害者の力を弱めていく」という、ココロとアタマの筋トレのHow Toを教えてくれるものになっている。ちなみにこのチャミンがこの概念を説明した日本語の書籍は「スタンフォード大学の超人気講座 実力を100%発揮する方法」(Amazon
成功して幸せになろうとする努力が失敗するのは、心が自分自身を妨害するから。人の心の中には最良の友である「賢者」と、妨害する「内なる敵」がいる。隠れた「内なる敵」を消し、「賢者」を強化し、能力をフルに発揮するよう個人と組織を変革する方法を具体的にわかりやすく説明する。- Amazon ページより
そこで登場するSaboteurたち - 妨害者・内なる敵。PQの考え方では以下の10のタイプが存在しているという。
  • Judge 裁判官
  • Controller 仕切り屋
  • Victim 犠牲者
  • Stickler 潔癖性
  • Avoider 優柔不断
  • Pleaser 八方美人
  • Restless 移り気
  • Hyper-Achiever 優等生
  • Hyper-Vigilant こわがり
  • Hyper-Rational 理屈屋
それらの中でも自分にとって特に強い妨害者になっているのはどれだろう、というのを教えてくれるのが、この「PQのSaboteurテスト」となる。PQのウェブサイト上から無料で受けることが可能な簡単なテストだ。10が最高値で数字が高いほど自分に強い働きかけのある妨害者という位置付けになる。

潔癖性が高く(完璧主義傾向)仕切り屋傾向がある私
こわがりで犠牲者傾向がある彼

お互いの「妨害者」が何で、自分たちのストレスレベルが高くなってきたときにどういう「妨害者」がネガティブな部分を出してくるか、相手はそれをどう受け止めるか、みたいなことをオープンにコミュニケーションできたりしていると、疲れが溜まって喧嘩になる前に被害が小さくとどめられたり、喧嘩になったあとも「そうだった、これは私の・相手の妨害者の仕業だったんだな」と捉えることができて、比較的建設的な解決につながることがある。

もちろん自分1人でも、自分はどういう「妨害者」に振り回されやすいか、という意識を持ち、それがムクムクと影響力を大きく発揮しそうになる前にブレーキがかけれるようになる訓練をするのも大事なこと。

・・と以上が4つのツール。ちなみにドラゴンボールが好きな方はこちらもご参考に▶︎マンガで考える性格特性理論①やる気スイッチ編 by 櫻本 真理 | CoachEd/cotree