「内なるレジリエンス」について書かれた記事を読んで

このブログに何度か登場している友人のKuniと入山先生のBiz/Zine上の連載の記事が面白いです。人によって刺さる部分は違うような気がしますが、おススメです。

今までの全ての回面白く、それぞれ「なるほど」または「確かに!」ポイントがあるのですが、私は特に第3回目が好きでした。内容が濃くて、残念ながらタイトルではその内容が上手く伝え切れていない気もするくらい。

第三回「ハブ人材」と「内なるレジリエンス」を保つ距離感

今の私にとって特に印象に残ったのは以下の3つ
  • 「弱い絆の繋がり」のところ
    前回のエントリ-で書いたニューヨークでの「仲間コミュニティ」とかまさにそんな感じです
  • 「大企業に所属する人が持つ『社外のネットワーク』」のところ
    最近自分の仕事の周りでもintrapreneurship育成とか話題になることが多いですが、そういう人が持っておくべきスキル、マインドセットに加えてだいたいこの「社外のネットワーク」というものがテーマにあがってきています。全員が会社を飛び出して起業すればいいわけでも、ベンチャ-やNPOに転職すればいいわけでもなく、大きな社会への変革を起こすには、または新しい価値を届けるにはリソースたっぷりの「大企業に所属」して、かつフットワーク軽いストーリーテラーが重要だと感じています
  • 「活動を持続するための『幸福感』『自己効力感』『楽しんでいるか』」
    まさに社内でよく話すことなので
最後に出て来ている「内発的動機と社会的動機」のバランスのところは特に最近考えていることだったりします。ソーシャルビジネスやNPOに関わる人の間でたまに見かけるパターンですし、社内でよく同僚と話していること。

イメージ図はこんな感じなのですが。


自分個人がやっていること(緑のボール)は、いかに地味な作業だったとしても(ソーシャルビジネス/NPOでやっていることなんてそういう小さなことの積み重ねが大半ですが)自分の行動が組織のミッション達成(青いボールを目指す方向に動かすこと)に直接つながるので「内発的動機が満たされる=社会的動機が満たされる」とても「幸せ」「やりがい」を感じやすい仕事です。自分が動けば動くほど、社会的インパクトが生み出されている感やゆっくりだとしても何かが着実に前に進んでいる感触が手に入ります。

だから関わっている人達でミッションに共感している人達は本当によく働きます。就労時間内だろうがそれ以外だろうが、組織のミッション達成に向けて生きる自分、といった感じに陥りやすいのも事実です。どこできっかけや出会いが転がっているか分からないですし、自分は自分の組織のアンバサダー。タイミングと場が合えばいつでも「仕事モード」に切り替えられるようになっていくソーシャルビジネス/NPOに関わる人達。内発的動機と社会的動機が一致しているからこそ起こる「加速のスパイラル」だと感じます。

もちろん生産性だけ考えたらそれは素晴らしいこと。人が自分の可能性の120%を振り絞って組織(それが目指している社会の在り方)に向けて全速力で走っていく。

でも、ここで見落としてはいけないのは、「目指す社会を実現すること」は長期戦(マラソン)であるにもかかわらず「加速のスパイラル」に巻き込まれてしまうことで個人を短期間で消耗してしまう(緑のボールがしぼむ、ヒビが入る)リスクがあるということ。

なぜなら人間が持つ「内発的動機」は仕事の外にも存在するから。

スパイラルに巻き込まれてしまうとその「仕事の外」に意識を向けるゆとりがなくなる。家族との時間やゆっくり寝る時間、仕事とはまったく関係のない時間を過ごす時間。それらは実は自分という人間の大切な土台なのに「加速のスパイラル」に巻き込まれ続けていることによって、足下がグラグラと崩れ始める。

そして起きるのがバーンアウト。「自分が止まったら組織の前に進むスピードも遅くなってしまう、ミッション達成に向けてスピードが落ちてしまう」・・という強迫観念に襲われるため「加速のスパイラル」最中にいると一息つくことすらどうしたらいいのか分からなくなることも。本当は少し休んでも、大きな青いボールの動きは完全に止まることもないし(仲間がいます!)、ましてや逆戻りすることもない。だから本当は自分の中の考え方をちょっと変える必要があったりするのです。それが記事がいっている「バランスをとる」ということにも繋がるような気がします。

本当にそういう環境で日々切磋琢磨し、働いている「出来る人」というのは、「内発的動機」という原動力を「社会的動機」に合わせ価値を発揮するのと同時に、別モノである「仕事とは関係ない内発的動機」に向き合う時間を大切にし、それを生み出す努力が出来る人だと感じます。

自分はそれがまだまだ出来ていないなと感じているので、今回の記事を読んで「やっぱりな」と思ったのでした。土台が崩れ始めているときは、楽しいとも幸せとも感じるゆとりがなくなりますからね。まさに「活動を維持するため」にとても重要なポイントが書かれている記事だと感じました。


連載の続きも楽しみです。


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#1 なぜ「脳科学」と「都市研究」が繋がるのか?